ったのでしょうか、鬼《おに》の足《あし》がだんだんのろくなって、もうよほど間《あいだ》が遠《とお》くなりました。そのうちずんずん空《そら》は明《あか》るくなってきて、東《ひがし》の空《そら》が薄赤《うすあか》く染《そ》まってくると、どこかの村《むら》で鶏《にわとり》の鳴《な》き立《た》てる声《こえ》がいさましく聞《き》こえました。
もう夜《よ》が明《あ》けてしまえばしめたものです。鬼《おに》は真昼《まひる》の光《ひかり》にあってはいくじのないものですから、うらめしそうに、しばらくは、旅僧《たびそう》のうしろ姿《すがた》を遠《とお》くからながめていましたが、ふいと姿《すがた》が消《き》えて見《み》えなくなりました。
坊《ぼう》さんはそのうち人里《ひとざと》に出て、ほっと一息《ひといき》つきました。そして花《はな》やかにさし昇《のぼ》った朝日《あさひ》に向《む》かって手を合《あ》わせました。
底本:「日本の諸国物語」講談社学術文庫、講談社
1983(昭和58)年4月10日第1刷発行
入力:鈴木厚司
校正:大久保ゆう
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全2ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング