ん。さしも大金持だった商人が、ふとしたつまづきで、いっぺんに財産《ざいさん》をなくしてしまい、のこったものは、いなかのささやかな住居《すまい》ばかりということになりました。そこで商人は、三人の男の子に言いふくめて、てんでん、ひろい世間へ出て、その日その日のパンをかせがせることにしましたが、女の子たちのうち、ふたりの姉は、自分たちは町におおぜい、ちやほやしてくれる男のお友だちがあって、いくらびんぼうになっても、きっとそのひとたちは見|捨《す》てずにいてくれると、いばっていました。けれど、いざとなると、たれも知らん顔をして、よりつこうともしないどころか、これまでお金のあるのを鼻にかけて、こうまんにふるまっていたものが、そんなざまになって、いいきみだといってわらいました。それとはちがって、末のむすめのことは、たれも気のどくがって、びた一文もたないのはしょうちで、ぜひおよめに来てもらいたいという紳士《しんし》は、あとからあとからとたえませんでしたが、むすめは、こうなると、よけいおとうさまのそばをはなれることはできないとおもって、どんな申込《もうしこみ》もことわりました。
こんなしだいで、一家
前へ
次へ
全22ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング