くごをした。でも、かえって来てくれたから、これで、せめてたのしく死ぬことができる。」
「いいえ、ラ・ベートは死んではなりません。」と、ラ・ベルはいいました。「あなたはいつまでも生きていて、わたしの夫になっていただきます。いま、わたしは、ほんとうにあなたを愛していることが分かりました。」
 このことばが、さけばれたとたん、御殿じゅう、火事のようにあかるくかがやきだしました。五|色《しき》の火花が、大空にとびちりました。さかんな音楽のひびきが、大地《だいち》をふるわせました。
 おそろしい怪獣のすがたは、どこにもみえなくなりました。
 そのかわりに、こうごうしいまでに、りっぱな王子が、そこにいて、むすめの足もとに膝《ひざ》まづいていました。そして、むすめのまごころの力で、なが年とけなかった魔法の呪《のろい》がとけて、ほんとうの姿にかえられたことを、よろこんでいました。
 でも、むすめには、まだそれがわからないのです。それで、心配そうな目で、怪獣のゆくえを追っていました。
「まあ、おきのどくなラ・ベート、わたしの怪獣さんは。」
「その怪獣が、わたしですよ。」と、王子がいいました。「あるいじわ
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