れたのです。兵隊はやはりせんの男の子にあいました。おなじおもちゃがそのうえにのっていました。かわいい踊ッ子のいるきれいなお城もありました。むすめはやはり片足でからだをささえて、片足を空にむけていました。この子もやはりしっかり者のなかまなのでした。これがすっかりすずの兵隊のこころをうごかしました。で、もう少しですずの涙をながすところでした。でも、そんなことは男のすることではありません。兵隊はむすめをじっとみました。むすめも兵隊の顔をみました。けれどおたがいになんにもものはいいませんでした。
そのとき、ちいさい男の子のひとりが、すずの兵隊をつかんで、いきなりだんろ[#「だんろ」に傍点]のなかへなげこみました。どうしてこんなことになったのか、きっとかぎタバコの黒い小鬼《こおに》のしわざにちがいありません。
すずの兵隊はあかあかと光につつまれながら立っていました。そのうち、ひどいあつさをかんじて来ました。でもこのあつさはほんとうの火であついのか、心臓のなかの血がもえるのであついのか、わかりませんでした。やがてからだの色はすっかりはげてしまいました。でも、これも長旅のあいだでとれたのか、心の
前へ
次へ
全12ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング