、そんなことなのか。わたしの生《い》き肝《ぎも》で、竜王《りゅうおう》のお后《きさき》さんの病気《びょうき》がなおるというのなら、生《い》き肝《ぎも》ぐらいいくらでも上《あ》げるよ。だがなぜそれをはじめから言《い》わなかったろうなあ。ちっとも知《し》らないものだから、生《い》き肝《ぎも》はつい出がけに島《しま》へ置《お》いてきたよ。」
「へえ、生《い》き肝《ぎも》を置《お》いてきたのですって。」
「そうさ、さっきいた松《まつ》の木の枝《えだ》に引《ひ》っかけて干《ほ》してあるのさ。何《なに》しろ生《い》き肝《ぎも》というやつは時々《ときどき》出《だ》して、洗濯《せんたく》しないと、よごれるものだからね。」
猿《さる》がまじめくさってこういうものですから、くらげはすっかりがっかりしてしまって、
「やれ、やれ、それはとんだことをしましたねえ。かんじんの生《い》き肝《ぎも》がなくっては、お前《まえ》さんを竜宮《りゅうぐう》へ連《つ》れて行ってもしかたがない。」
「ああ、わたしだって竜宮《りゅうぐう》へせっかく行くのに、おみやげがなくなっては、ぐあいが悪《わる》いよ。じゃあごくろうでも、もう
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