う伝説から来たものといわれているが、然し時々伝説という奴は真理をもっているもんだ。磁力線と並行の北枕というのが、理論上最も静かなる位置なんだからね。その磁力線を直角に截る方向に置き、それをアンテナと地中線を張って有効に捉えたとすれば、その僕の企てた増穫が不思議でもなんでもないじゃないか。事実が最高の理論だよ、それは総ての方面に応用されていいんだ。地球上に無駄に放射されているエネルギーを、誰がどんなに利用しようと一向差支えもないからね」
私にはどうも正確には呑込めなかったけれど、どうやらこの森源は、ただの『変り者』ではないように思われて来た。この空中エネルギーの利用法だって、ただにアンテナを張ったばかりでなく、何かもっと新装置がしてあるに相違ないのだが、若しこの方法が、彼のいう通り甚だ効果的であるならば、広く一般に利用し、たちまち食糧問題なども解決されるほどの大発見に違いないのだ。
森源の言葉に、尠からず興味を覚えた私は、それでなくとも一日の長さを持てあましていたこの際、いい相手が出来たとばかりその温室に腰を落着けてしまったのである。
ガラス張りの室内は、太陽の光りを充分に受けてい
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