、甚しければ職ある者も之を失ふといふことになつて居る。此等は先輩が二三決心をすれば一挙にして除去し得る事柄である。之を除去し各般の社会的制度慣行が、青年の活動を少くとも之に伴ふやうにすれば、初めて以て青年に犠牲奉公を説くことが出来るのである。今日の青年は今や正に時代の変と社会の欠陥を意識し、之を先輩に訴へ、或は自ら之が為めに努力し以て青年全体の活動を滑かならしめんと志しつゝある。斯くせざれば国家の前途亦甚だ危いと憂ひて居る。徒らに青年の志気の頽廃を説くの説に対しては、時代を解せざる老翁の繰言の如く、其誠意を諒として密かに其老を笑ふといふやうな風になつて居る。現代の青年は蘇峰先生の警告に接し或は此風の説明に多少の不足を感ずるのではあるまいか。
底本:「日本の名随筆 別巻96・大正」作品社
1999(平成11)年2月25日発行
底本の親本:「吉野作造選集3」岩波書店
1995(平成7)年7月
入力:加藤恭子
校正:染川隆俊
2001年2月28日公開
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