首。
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内日さす都めぐりの里つづき咲く梅しろき朝ぼらけかな
梅が香をそよ吹き入れて衣架《みそかけ》のころもに香る春の朝風
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明治二十三年の春。
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六十路あまり八とせの春は越えぬれど心老いせぬものにぞありける
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人人と、嵯峨へ花見にまかりて。
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山のかぜ花に吹くなりひと羽《はね》に千里《ちさと》おほはん大鳥《おほとり》もがも
花守もこころ狂ひし人と見ん桜のもとに酔ひて寝たれば
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明治二十五年の秋、周防国徳山なる照幢の許に遊びにまかりける途中。
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周防《すは》の国|玖珂《くが》の鞠生《まりふ》の浦漕げばうらさびしくも秋の浪立つ
周防《すは》の海かぜふきかはりみなの曲《わた》黒雲いでて秋の雨ふる
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そこに冬までありて、京に上らんとする時。
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おもひやれ浪路を帰る老が身のわかれは死出のここちこそすれ
山の庵に誰待つ人はなけれども帰りてとらん新しき年
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その年の暮に。
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つくろはず檐の老木を門松にことなく年の暮るる庵かな
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明治二十六年の元且に。
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立ちかはる年の吉言《よごと》にみ仏の御名《みな》をとなへて祝ふ春かな
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桃花。
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桃の花したてる路を行けばかも垢つく衣《きぬ》も袖にほふらし
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大圓、照幢等の、老が身に事ふることのまめやかなるも嬉しく、はた仏の慈悲、天地のめぐみの深きをも喜びて、折折に詠める。
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家もなく功《いさを》もあらぬ老なれど子持《こも》たるゆゑに危げもなし
老が身を何かは思ひかこたまし子等うちよりて我を養ふ
おもしろや夢と現《うつつ》のなかぞらに又まぼろしのなぐさめも見つ
身に
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