くは夢にかあるらん
[#ここから2字下げ]
(寛いふ。この最期の二首は、父が枕のもとなる大きなる壷に、彌壽子が生けたる萩桔梗などの匂へるを見やりて詠み給ひけるなり。)
[#ここで字下げ終わり]
禮嚴法師歌集 完
[#ここから3字下げ、1行20字組みで]
父君のはかなくなりたまへる前の日、御枕のもとに子等をつどへて、永き別の歌よめとのたまひければ、泣く泣くもきこえまゐらせける。
[#ここで字下げ、20字組み終わり]
[#地から2字上げ]大圓
[#ここから2字下げ]
もろともに仏の道をよろこびて後の世までも親子とや言はん
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ]照幢
[#ここから2字下げ]
親といひ子といふも世のかり名にて入我我入のさとり楽しも
[#ここで字下げ終わり]
[#地から5字上げ]寛
[#ここから2字下げ]
親といへばなほ人の世のわかれなりまた遇ひ難き仏とぞ思ふ
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ、折り返して3字下げ]
訂正追加。
一、此集の印刷を終れる後丹後の加悦村に九十六歳になれる老媼某現存し、父の幼時を記憶し居りて、童名は長藏、元服して後の幼名は儀十郎と云ひし由を語れりと、従姉細見千枝より報じ来れり。
一、また、父が若狭国の専能寺に養はれ給ひし頃男響天に先ち一女峰野を挙げられしが、二歳にして夭折せし由、兄響天より報じ来れり。
一、此集の三十二頁なる大圓の清国に赴きけるをしのばれし歌の中に「子のかみをいくさにやりて山里に風の吹く日は物をこそ思へ」と云ふ一首ありしを、印刷の際脱漏せり。
[#ここで字下げ終わり]
底本:「明治文学全集64 明治歌人集」筑摩書房
1968(昭和43)年9月25日第1刷発行
底本の親本:「禮嚴法師歌集」新詩社
1910(明治43)年8月
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の旧字を新字にあらためました。固有名詞も原則として例外とはしませんでしたが、人名のみは底本のままとしました。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:武田秀男
校正:Juki
2004年6月23日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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