かた》の火の明り。

合せ鏡の中《なか》にある
曲れる、曲れる、梯子段《はしごだん》、
一段《いちだん》のぼればよろよろと、
二段《にだん》のぼれば恐らくは
生きて帰らぬ「夢」の塔。

二時を過ぎたる真夜中も、
此処《ここ》は SABBAT《サバア》 のまつさかり。
土耳古、仏蘭西、西班牙《エスパニヨル》、
意気な BASSE《バツス》 に CASTAGNETTE《カスタネツト》、
RYTHMES《リトム》 D'AMOUR'《ダムウル》 しよんがいな。
赤い裾《バスク》の踊子《ダンスウ》、
あれ、まんまろく拡がれば
時を択ばぬ花が咲き、
黄金《きん》と、紫金《しこん》と、銀《アルジヤン》の
虹をば飜《かへ》すあの上衣《ロオヴ》。

そこの隅《すみ》ではひそひそと
ちょいと此間《このま》に一《ひと》 BAISER《ベイゼ》。
見て見ぬ振のてれかくし、
前《まへ》の杯《※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]エル》を軽く取る
此処のみじめな VERLAINE《※[#濁点付き片仮名ヱ、1−7−84]ルレエヌ》

とまどひしたか、〔UNE《ウンヌ》 BEAUTE'《ボオテ》〕、
たとへ虚偽《うそ》
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