に召せや千すぢの魔もからむ髪
ふる鏡霜に裂けたるこだまなし夜烏《よがらす》むせび黄泉《よみ》にや帰る
かたつぶりひさしに出でし雨ふつ日瓦にさきぬなでしこの花
たもち得ぬ才はたとへばうまざけの破《や》れし甕《かめ》にも似たるこの人
ましら羽の鳥に啣《ふく》ます花ひとつ武蔵のあなた十里におちよ (上総なる林のぶ子の君を懐ひまつりて)
髪なでて鏡ゆかしむ夜もありぬ夢にや摘まむしろ百合の花
わが袖も春のひかりの帰らじや牡丹|剪《き》らせて皷《つづみ》に添へば
雲に見る秋のうれひを葉に染めて泣くにしのぶに陰よき芭蕉
扇なす彩羽《あやは》の孔雀鳥の王おごりの塵を吹く春のかぜ
大原女《おはらめ》のものうるこゑや京の町ねむりさそひて花に雨ふる
おばしまの牡丹の花に額《ぬか》たれて春の真昼をうつつなき人
幸《さち》はいま靄《もや》にうかびぬ夢はまたしづかに降《お》りて君と会ひにけり
薔薇《ばら》もゆるなかにしら玉ひびきしてゆらぐと覚ゆわが歌の胸
せめてただ女神《めがみ》の冠《かむり》しろ百合の花のひとつと光《ひかり》そへむまで
地にわが影|空《そら》に愁の雲のかげ鳩よいづこへ
前へ
次へ
全33ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
山川 登美子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング