しがほや瓜《うり》ひとめぐり嗅《か》ぎても徃《い》ぬる
才《さい》なさけ似ざるあまたの少女見むわれをためしに引くと聞くゆゑ
わが恋はいさなつく子か鮪《しび》釣りか沖の舟見て見てたそがれぬ
白きちさき牡丹おちたり憂かる身の柱はなれし別れの時に
星よびて地にさすらはす洪量《こうりやう》の人と思ふに批《ひ》もうちがたき
花に見ませ王《わう》のごとくもただなかに男《を》は女《め》をつつむうるはしき蕋《しべ》
在《ま》さぬ二夜《ふたよ》名しらぬ虫を籠《こ》に飼ひぬ寝がての歌は彼れに聞きませ
耳かして身ほろぶ歌と知りたまへ画ならばただに見てもあるべき
ややひろく廂《ひさし》だしたる母屋《もや》づくり木の香にまじるたちばなの花
祭の日|葵橋《あふひばし》ゆく花がさのなかにも似たる人を見ざりし
精好《せいがう》の紅《あけ》としら茶の金襴《きんらん》のはりまぜ箱に住みし小皷《こつゞみ》
杉のうへに茅渟《ちぬ》の海見るかつらぎや高間《たかま》の山に朝立ちぬ我れ
八月や水蘆《みづあし》いとうたけのびてわれ喚びかねつ馬あらふひと
夕かぜの河原へ出づる小桟橋《こさんばし》いそぎたまふに
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