も出ずにゐたので、女中のルケリアがスウプと粥とを部屋に運んで食べさせたのである。
セルギウスはパシエンカの帰つたのを見て云つた。「お約束より早くお帰りでしたね。今お話が出来ませうか。」
「まあ。なんと云ふ難有い事でございませう。あなたのやうなお客様がお出なすつて下さるなんて。わたくしはいつもの稽古を一時間だけ断りました。跡から填合《うめあはせ》をいたせば宜しいのです。わたくしは疾《と》うからあなたの所へ参詣しようと思つてゐました。それからお手紙も上げました。それにあなたの方でお出下さるとは、まあ、なんと云ふ難有い事で。」
「どうぞそんな事を言つて下さるな。それからわたしが今あなたに話す事は懺悔ですよ。死ぬる人が神様の前でするやうな懺悔ですよ。どうぞその積りで聞いて下さい。わたしは聖者ではありません。罪人です。厭な、穢らはしい、迷つた、高慢な罪人です。人間の中で一番悪いものよりもつと悪い人間です。」
パシエンカは目を大きく※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》いて、セルギウスの詞を聞いてゐる。セルギウスが真実の話をすると云ふ事が、婆あさんには分つてゐるのである。婆あさん
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