線がさし込む。
王はしっかり右の手で左の腕を握って一箇所を見つめる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
王  あやまる?
 いかにも口惜しい、事じゃ。
 我と我が身を雲を突く山の切り崖《ぎし》からなげ出いて目に見えぬほど粉々にくだいてしまいたいほどじゃ。
 今までによう味わなんだ、
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あやまる
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
 と云う事を経験せねばならぬ時になったのじゃ。
 わしは今まで、
[#ここから2字下げ]
あやまる
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
 と云う言葉さえ聞くのをようこのまなんだ。
 それにかかわらず、その言葉の響きを一つ一つ聞き自らその味をなめて見ねばならぬ時になったのじゃ。
 わしはなやましい折も気の狂わぬ頭と体をもって居る。わしの勇気は最後の勝利を得ようためにこのいまわしい思いも致して見るがよいのじゃとしり押し致いて居る。
 そうじゃ思い切って、あやまるのじゃ。法王に謝すと思えばこそ、腹も立つ。わしのこの尊い頭に少し許りでもいまわしい思いをいたさせた事を己の頭に謝するのじゃと思えばよいのじゃ。
 最後の勝を得るためなのじゃ。
 謝したものが愚者じゃ負者だとは定められぬものじゃと云う言葉をわしが云い始める様にするのじゃ。
 しがいのある事をすれば敵が一人ふえ、立派なもののうしろにはいつもみじめな影のさすのはきまった事なのじゃ。
 わしはこれから「カノサ」に参って法王に会うて参らねばならぬ。
 只わしを偉大なものに致すためにのう。
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王は長椅子によって深い溜息をつきながら小さくまたたく燈火を見ながら極く低くつぶやく。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
王  わし自身のためじゃ、
 最後の勝利を得るためなのじゃ。
[#ここから4字下げ]
首をたれて右の手でそれを支う。
[#ここで字下げ終わり]
[#地から1字上げ]静かに幕

    第二幕

     第二場

    場処
  イタリー、サレルノの一農家(法王の仮居する家)

[#ここから4字下げ]
景 舞台の略《ほぼ》中央に、貧しいながらも白い清潔な帳を垂れた寝台が置いてある。
その囲りには古い家具
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