第一の女と)の頭巾をつけ髪をかま[#「かま」に「(ママ)」の注記]っかく巻いて頭巾のそとに食み出させてよく光る耳飾りをする。
第三の女、第一の女と同じ色に縦に五本ほど太い組紐で飾りのついたのを着て頭巾は後の方のパッと開いたのをつける。
非番の老近侍は茶の上着を着て白と黒の縞のキッチリのズボン白い飾りのついた短靴をはいて飾りのついた剣をつるす。ふちのない上着と同色の帽子についた王家の紋章が動く毎に光る。
第二の女の声は陽気で、第一第三の女はふくみ声でゆっくりと口をきく人。
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第二の女 まあ! ここにいらっしたんでございますの?
 おさがしして居たんでございますよ。
第一の女 あらそうでございましたか。
 大変お気の毒様な事を致しました。
 私さっきからここに居たんでございますの。
 あんまり静かな日でございますものねえ家の中に居るのは惜しゅうございますわ。
第三の女 丁度いいあんばいに日光をうけてつたが燃えそうでございますわねえ。
 まあ□□[#「□□」に「(二字不明)」の注記]一寸御覧なさいまし、少しでも雲が動くともう色が幾分かかわるんでございますよ。
 あきませんわほんとうにいつまで見て居ても……
第二の女 まあほんとうに奇麗でございます事。
 でももうやがてに冬が来る前知らせなんでございますわ。
 ろくにあかりの入らない部屋の中で毎日毎日嵐の音をききながら寒さにめげて火の傍に置いてやってさえも鳴かない小鳥のふるえるの見ながらはだかの木の芽のふくれる時ばっかりまちかねて居なければならない冬がもうすぐ参りますわ。
第三の女 それにねえ、私は人様より倍も倍ももの寒がりなんでございますもの。
 もう冬と云う声をきくとすぐこう、ぞっとしてまるで風でも引いた様になりますの、貴方様なんかよけい冬がおきらいでいらっしゃいましょう。(老近侍に向って云う)
老近侍 神の御恵でござるじゃ、一向に冬をつらいとは思いませんでの、息子達が止めさえ致さなんだら雪なげなり何なり十五六の子に交っていたすでの。
第一の女 何よりな事でございますわ。(低く陰気に云う。間を置いて地面を見ながら)私は冬よりもっと恐ろしい、そしていやらしい事をききましたの。
 冬の来るのも寒くなるのも忘れて心配して心細がって居るんでございますわ。
 世
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