われた。過去一年間の新日本文学会員の創作活動が、作者と作品の題名、発表誌の名だけをならべて報告されたぎりで、各作品が民主主義文学のきょうの段階にとって、どういう意義をもつものかという評価は一つも行われなかった。そのかわり、小説部会は、第三回大会に向って民主主義文学の基礎である三つの問題をだした。一、「創作をはばむものはなにか」、二、「評価の基準」、三、「民主主義文学の主体はなにか」これら三つの基本的問題が、こういう問いの形でだされなければならなかった以上、小説部会の報告が創造活動についてただ記録し羅列する形しかとれず、発展的、鼓舞的なヒントを与えられなかったわけである。小説部会の報告では、過去一年間理論と創作活動とがてんでんばらばらに行われ、各作家もそれぞれの特質を発揮して活動したにもかかわらず、民主主義文学運動として統一綜合された力として感じられなかったという点もふれられた。
ところで、三日の間、理論部会や中央委員会の報告をきいたわたしの心に、やはりこの小説部会報告のなかにあったような、一つのみたされないこころもちがのこった。それぞれの報告は、それとして熱心であり、勉強されており、
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