、お上《かみ》、役所、役人、何でも官僚的な権力に対して、殆ど独立人としての判断さえ示さない習慣がある。長いものには巻かれろ、という封建時代のことわざを、言葉として否定していても、精神は屈従し、打算保身は膝をかがめさせる。そのために毒薬さえすらりとのまされた。青酸加里を毒物と知っている人民も、政府予算の八五%は働く人民の懐からまき上げるという、間接殺人は頂いて、更に二百万人の馘首をしようとしている保守政府を頂いてもよさそうな輿論を示すものさえある。中毒する大豆粉にも、政府の命令ならば感謝する日本人というものを、軽蔑しないものがあろうか。日本の反民主的な勢力は、自分の失敗をなくすのに、二つの英語の略語を利用する。
わたしたち日本の人民は、人民の合議の上で決定される社会の運営法があるのだ、ということを、もっと現実的に知るべきである。民主主義ということは、わたしたち一人一人の常識と正義感と人間らしい矜持に立つ毅然とした態度であることを自覚しなければならない。人民の汗と血が八十一億の金となって官僚をやしない二六四億の終戦処理費となっている。こういうことについて、はっきり目をあけて、自分たちの運
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