携帯口糧のように整理された文化の遺産は、時にとって運ぶに便利であろうけれども、骨格逞しく精神たかく、半野生的東洋に光を注ぐ未来の担いてを養うにはそれだけで十分とは云い切れまいと思える。
 三代目ということは、日本の川柳で極めてリアルに抉《えぐ》って描写されているが、今から先の三代目という時代の日本というものを文化の面でも切実深甚に考慮しなければならないのだろうと思う。世界は複雑に複雑にと推移しているのだから、単純きわまる主観人として三代目が出現したりしたら、愛するわれらの国はどうなるだろう。今日は常に明日につづいている。ここに深い意味がある。
[#地付き]〔一九四〇年十月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
   1952(昭和27)年8月発行
初出:「日本学芸新聞」
   1940(昭和15)年10月25日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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