も着るものも大人なみである。本だって沢山よみたいし、運動もしたい。ソヴェト同盟には工場図書館、スポーツ・サークルが発達していて、大体無料でいろいろのことができるが、食物、衣服はまだ無料とはゆかない。若い男や女の勤労者が、真に健康に、立派に階級の前衛として育つために、ソヴェト同盟では、男女青年労働者の待遇の徹底的改善を決定したのである。
その教室を出て、もう一つの教室へ行くと、そこでは若い生徒ではない、もう四十五十の小父さん小母さんが十人ばかり、むきな顔をして代数の勉強をやっていた。職場で働いているが、こういう人々はもっと自分の技術を高めて、ソヴェト同盟が最も必要としている技師になり、皆の役に立とうと、若がえって健気《けなげ》な勉強をやっているのである。
わたしは、工場を見ているうちに一歩一歩と、水浴びでもした後のようにいきいきと爽やかな気分になった。「未来は我らのものである」という強い確信は、こうしてソヴェトの労働生活の現実的な建設によって一つ一つ実現されつつあるのだ。希望と勇気にみたされ、わたしは並木道の下を更に工場クラブの方へ行った。[#地付き]〔一九三二年九・十月〕
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