観、批評し、想い思う明らかな叡智を、充分に持って居ないのではあるまいか。
総ての人間は戦った。けれども平和を求めて居たのだ。
総ての人間は、約束の「名」に惑わされた。けれども、互に同じ「人」であるのを知り、約束の名は、「名」として見られる筈であった。
現在、私共の生活を支配して居る数多の形式、形式の生む種々の迷信と、羈絆とは、如何な力で解かれなければならないのか。
私共には、その力が無い。その純粋さから湧く、太陽のような力が無い。其の力が無い許りに、私共は恐ろしい紛糾と悔恨の苦い杯を、幾度強いられなければ成らないのだろう。
如何にか成らなければ否《いけ》ない。
そうどうにか「仕な」ければならない。
其なら、如何う成るのか、如何うすると云うのか?
ああ静かに、周章てずに――我心よ、我心よー。私は自分の裡に辛うじても保つ、微かな燈火が、自らの煽りに燃え尽きて仕舞う事を杞《おそ》れる。
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
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