婦人の皆さん
宮本百合子

 きょうは、うれしいニュースを、おつたえいたします。私たちの代表として、大町米子さんが立候補されることに決定しました。所属は共産党であります。皆さんよく御承知のとおり、大町米子さんは、親しみぶかく、なつかしい私どもの仲間です。私は大町さんを十年ほど前から知って居ります。大町さんが、その頃はまだ非合法であった日本勤労人民解放のためのたたかいに、どんなに辛棒づよく努力したか、警察や家庭の封建的な習慣のために、どんなに苦しい思いを経験したか、私はそれを大町さんの眼にたまった涙の一しずく毎に、知って居ります。
 大町さんは、七年の間病臥にあった御良人のために、誰よりもよい看護婦でありました。誰よりもよい看護婦である傍ら、自分たちの生活のために、国民学校教員となって、働きました。地方の農村の国民学校が、すべて学業よりも草刈り、繩作りと軍需供出にせめたてられていた最中に、先生としてすべての労作に耐えて来ました。
 良人が亡くなられてから、上京して暫く国民学校につとめ、近頃は大町さんの最も愛する仕事、日本の働くすべての婦人の向上のための仕事に従って居られます。
 大町さん
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