でも、まだ一部の者は実力で争うという場合、戦争を想像している。けれども、こんにちの科学はイギリスの政治家が云っているとおりの事情になっている。――イギリスがソ連とたたかえば一週間で壊滅されるだろう。アメリカとたたかえば一ヵ月でイギリスはつぶれるだろう、と。――
 戦争というものは、第二次大戦を経たこんにちでは、世界においてますますその古くさい野蛮さと非条理とを明白にしている。その証拠には、こんど第二次大戦に勝った強大国が、負けた諸国と無関係に自分の国の内だけの繁栄をたのしんでいられない有様を見てもわかる。
 第一次大戦のとき、連合国の一つとして最も少い損害をうけたのはアメリカであった。第二次大戦で、最も僅かの人命を犠牲としたのはアメリカであったし、本土に襲撃を蒙らなかった唯一の国もアメリカであった。そのように比較的少い損傷でヨーロッパと東洋のファシズムとたたかい、それをうち倒したアメリカが、こんにちもっている諸問題の複雑さと大さとはどうだろう。国内的に国外的に決して解決に容易だといえない問題を両手いっぱい、膝の上にまでもっている。
 戦時中、軍需生産のために膨脹した生産能力を、同じに近
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