うのです。日本にファシズムは生きています。同時に日本のファシズムを寄生的に生かす世界のファシズムが存在しています。イギリスのバーナード・ショウはああいう皮肉やですからその点ははっきりしています。彼はファシズムが、自分の国にながく生きがよく存在していることを新聞でいっています。日本のファシズムは便乗してお墨つきで生きているのです。
 世界文学について真剣に考える時、このことを忘れてはいけないと思います。口の先であるいはいろいろ印刷物の表面では民主化、民主化といって、日本の民主化は進行している、きわめてスムースに進行しているというようなことをいいながら、その半面で露骨にファシズムを植えつけて行くことが可能なような社会意識に日本を止めておくことは私ども日本の人民にとって非常に恐ろしいことです。そして、人民としての恥辱だと思います。なぜかといえば、毒がどれだけわれわれの体に廻るかということを知らないうちに、毒が注射されているからおそろしい。
 そういう注射を心づかないでいるなんて、云いわけにもなりません。ドイツがヒットラーのナチスのためにあれほど悲劇的壊滅をした。すべてのドイツの人がファシスト
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