もこまかく生かしてゆかなければならないと思います。そしてファシズムと闘う文学活動について考える場合、いきなりぱっとジャーナリスティックな敏感さでフランスのレジスタンスの作家たちというような飛躍をするだけでなく、本当に闘う者の腰のすわりで階級的通信活動という形の小さいしかし機能の大きいものにまでほりさげて感覚し、実践してゆくことこそ具体的なファシズムへの抵抗と勝利の道であると信じます。
 わたしたちは生活の間に喜びとはげましのこもったやさしい慰めとを求めています。文学はこれに答えるものとして求められています。美しいものを感じたいわたしたちの気持、やさしさを受けとりたいわたしたちの人間らしさ、そういうものがわたしたち自身の表現をもつことなく、与えあうことがなく、肉体の文学ややくざの世界の物語のどぶの中に流されてしまうとしたら何と悲しいことでしょう。ファシズムの持ち前である生物的な同時に権力的な幻想の世界は、一種のロマンティシズムのようにあらわれて若いひとびとを戦場にかりたててきたことをみてきました。ファシズムとの闘いには、こういうやわらかい人間の心をわたしたちが正しい方向にもりたててゆく文
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