ューマン、英国前外交顧問ヴァンシッター卿その他を委員とする、いわゆる「欧州問題研究委員会」は「長期に亙る犠牲の多い戦争を終結させるために朝鮮で原子爆弾を使用すべきである」という文書を、西欧各国政府におくった事実をつたえている。更に、この委員会は「モスクワ・レーニングラード・オデッサ・キエフその他の都市を原子爆弾で破壊すべきである」、「ウクライナとシベリア間数千マイル平方の土地を、ほのおに包まなくてはならない。」と提言しているのである。この委員会は、細菌兵器も禁止すべきではないとしている。味方の手には、あらゆる殺戮の武器を与えようとするこの種の平和運動者を指弾するらいてう氏の警告にはこのようにして事実の裏づけが見出されるのである。きょうの現実の間で「二つの世界」をいうならば、それは一方に真実世界平和のために努力しつつある人々の良心の世界があり、他の一方に、平和のための戦争挑発、平和のための原子兵器、細菌兵器使用をけしかける屠殺者的平和主義者の世界と、この「二つの世界」があるだけである。[#地付き]〔一九五〇年七月〕



底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
   1980(昭和55)年6月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
   1952(昭和27)年1月発行
初出:「婦人民主新聞」
   1950(昭和25)年7月29日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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