の床のわきで羽織のほころびをつくろいながら、ひろ子はそんなことを熱心に話した。もう重吉は、つぎは俺がしてやると云わず、よみかけの書物を枕のわきに伏せながら、仰向きにねていた。

        七

 十日ほど重吉が引こもっていたうちに、丘と丘の間にある自立会に向って、四方から流れよって来ていた力が、渦になって、そろそろと仕事の中心を、市内へ押し移しはじめた。
 ある朝、出がけに、重吉はひろ子に一枚の紙きれをわたした。
「こんど事務所がそこになるんだよ、きょう、昼ごろ、弁当とどけて貰えるだろうか」
「この新しい方へ?」
「ああ」
「いいわ」
 紙きれには鉛筆であっさり地図がかかれていた。元電気熔接学校というところが赤旗|編輯局《へんしゅうきょく》と示されている。
「この地図頂いておいていいの? あなたは大丈夫?」
「大丈夫だ。代々木の駅からすぐだよ、二本目の道を来ると、左側だ」
 時間をはからって、ひろ子は弁当包みをもって代々木駅に降りた。ごくたまに乗換のとき、しかもひろ子の記憶では、のりまちがえて間誤付きながら乗りかえるようなとき、二三度のぼりおりしただけの代々木駅の前に立って、地図
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