た若い瀬川さんが、俺はもう女房孝行だけして子を育てることにきめたよと云って、段々張がなくなって、じじむさい男になって行くのをうれしがって見ていられること?」
 牧子は、
「――そうねえ」
 心から吐息《といき》をついた。瀬川の生きかたを理解し、瀬川の性格の美しさがわかっていても、くりかえし、くりかえし執拗に生活を破壊されることに牧子は殆ど耐えがたくなって来ていたのであった。
「年末になると、わたし段々おなかが重くなるし、そうすると又暫くお会い出来ないから、きょうこそと思って……」
 牧子は、いかにも心の祝いをあらわすように、
「これをおばちゃんに上げましょうね」
 袋のよこにさし出ていた白い小菊の花束をくれた。
「いいにおい。――うれしいわ、丁度石田がねているから」
「病気がおわるいの?」
「足なのよ。痛くて歩けなくなったの。たださえくたびれるのに、よく方角を間違えて、途方もなく歩いたりするんですもの」
 道が二股にわかれて、一方の草堤に自立会と明瞭に書いて矢じるしをつけた立札が立っていた。ひろ子たちの前の方を、背広の男が一人ゆっくり歩いていた。遠くからその立札に目をつけているのが、う
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