説一冊ヲ受ク」
「十日、金曜日にP・M9・25熱海発宮の下富士屋ホテル行一泊ス。」この日には鉛筆で書かれ大きい別な字で、
┌──────┐┌───┐
│血尿 3回 ││宮の下│[#「3回」「宮の下」は縦中横]
└──────┘└───┘
と特記しています。
熱海ホテルでは暖房の工合がわるくて落付かないと云って、妹をつれ、宮の下へ行ったのだそうでした。翌十一日には、朝昼二回血尿とあり。父は自分の体の異和を益々感じたと見え「A・M・9発(箱根宮の下八時半立)汽車ニテ直接慶応病院ヘ入院ス」と、やはり鉛筆で記入しています。例の調子で「二階い十」と別にかこって書いています。
┌──┐
│KO│
└──┘
などともある。十二日から二十七日まで毎日注射をうけたこと、十四日にレントゲン写真腎臓結石とわかったこと、十八日には入浴を許可されたこと、二十一日に「A1連中ヨリ夕食ニスープ及ジェリーヲ贈ラル。礼状出ス」家族にわたした金の額などまで書かれています。二十七日には私に判読出来かねる乱れた筆蹟で短い英語がかかれているだけです。
或る別の手帳をあけて見たら、何かに打ち興じた折、
前へ
次へ
全14ページ中13ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング