月十日までに解放さるべき思想犯の氏名が列記されている。(府中)と拘置されている地名の上に、先日外人記者とインタービューした徳田球一の名が筆頭に明記されている。ひろ子の視線はつき刺さる矢のように、それに続くたくさんの姓名の上を飛んだ。石田重吉(網走)と出ている。出ている。出ている。網走、石田重吉と出た。これで、重吉は帰る、ひとりでに呼び声となった。
「縫ちゃん! 縫ちゃん!」
廊下の途中で、手をふきふき来る縫子の腕をつかみしめた。
「縫ちゃん、これ見て!」
「おお! 出ちょる、出ちょる!」
「さあ、もうたしかよ」
ひろ子は、
「ああ、たすかった」
心からうめいて、目に涙を浮べながら笑顔になった。声をききつけて、白い粉にまびれた手のまま、叔母もかけて来た。
「どうでありますか? 出ちょってでありますか」
「ほれ、こんに」
縫子がその記事をさした。
「どれ、どれ」
さし出された新聞を、都合のよいところまでもう一遍はなして叔母は読んだ。
「ほんに。こんどは確実でありますよ」
「私、こうしてはいられない」
ひろ子は、にわかに困ったような、たよりなげな表情になった。
「十日までというか
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