の中では、十二年前に書かれた一方的な告訴の理由とほとんど変更されていなかった。わずかにあくどい形容詞がとりのぞかれ、故意に計画的に行われた殺傷のように説明されていた部分が、偶発の事実として認められているばかりであった。重吉の努力や陳述がどうであろうと、よしんばそれがどんなに条理のとおったものであろうとも、この事件はこちらとしてこう扱うときめているのだ。そう云う頑固さが文章にみちている。
 ひろ子は、それを素朴としりながら、あらたに驚歎を感じた。仮にも大学を卒業し一個の良人であり父親でもある五十がらみの男が、こうも非条理の文章を読みあげ、それを妻子に見せられた姿であろうか、と。
 裁判長は、理由をよみ終った。主文と、区切って、声を高め、無期懲役に処す、と読んだ。つづけてすぐ事務的に、この判決に不服ならば一週間以内に控訴するように、と早口に云い添えて、裁判所関係のものは一斉に並んだ椅子から立ち上った。重吉も立った。ひろ子は、自分の知らないうちに起立して、こちらをふりかえった永田さんの実直な色白い顔がひどく紅潮しているのを見た。
 裁判長を先頭にして、一同ぞろぞろ控室に入って行く。その間に、
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