額ぶちに入れて長押《なげし》に飾られていた。そのすこし下まで水があがった。
 しげの[#「しげの」に傍点]の同僚が手伝いに来てくれて、床下から、土間から一通りかきのけられたべた土が、忽ち背戸に盛上げられた。床板もはずして川で洗われなければならない。水を吸って化物のように重くなったすべての畳がもち出され、干されなければならなかった。米も濡れた。漬物も水の下になった。塩と味噌とは流れてしまった。永年棚の奥に煤けていた古い書類が、行李ごとしずくをたらしてもち出された。
 ひろ子は二階の窓から屋根へ出て、濡れた衣類、布類を干す役にまわった。今までどこにあったのか、いつ、何の役に立つのか、ひっそり歳月の流の底にしずんでいた一切の古布どもが、一片たりとも、びしゃびしゃに濡れて、臭くなってその存在を主張した。
 今朝は秋晴れというにふさわしい澄んだ青空の下の、部落の屋根屋根に女や男が出ていた。濡布団、衣類、何かの穀物をむしろの上にひろげたもの。往来にも部落じゅうのものが出て動いていた。みんな不機嫌で、黙って、忙しく、重いものをかついで川との間を往来しているのであった。
 午ごろ、あちこちから噂がつた
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