た。危険はそこにあった。母と小さい二人の孫とは、安全に置かれなければならない。
ひろ子はそれを、自分の責任として感じた。
「この辺で小舟なんかつかわないんでしょうね」
「そんなもの、あらせん」
怒ったように沢田が答えた。
「ともかく、お母さんと小さい人は家を出ましょう」
日頃剛毅な母が、しんから辛そうに、
「どうなろうかいの。こんだけ水がおごっちょるのに、どうで渡れよう」
啜《すす》りあげるように叫んだ。
「もうええ、もうええ。家がこけたらここで死ぬるばかりいの」
揺れ動く蝋燭の不安定な光に照らし出された二階の雑然とした一室に恐慌が充満した。
ひろ子は東窓から、新道の方角を見た。目のとどく限り、こちら側の水嵩は低く、新道の上はうっすり白く見えた。
「裏へ出ましょう」
とっさに、きめた。
「梯子はどこにあるの? つや子さん」
「おばあちゃん、梯子どこかいの」
縫子が、
「この階段はずしてかけたらええ」
と云った。箱階段でとりはずしがきいた。
「それがいい。誠さんすみませんが、梯子、裏へかかるでしょう?」
すぐ、父子が、はしごを窓越しにかき出して、屋根へ出た。
「つやちゃ
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