冬かが印した凍傷の痕があるのである。大いに笑う彼の顔を見て、一緒に大笑いしずにいることは困難であろう。
或る演説の中で、徳田さんは、日本婦人の一般は、本人たちが自覚している以上のおどろくべき運命に陥っていると語った。そして日本の婦人は誰もが自由にかつえているばかりでなく、愛情にも飢えていると断言した。
私は、こうした着眼点を知って、徳田さんの人間的感覚に改めて注目した。徳田さんの意味する愛情は、女対男の限られた範囲のものではなく、女の生活全面に配られるべき人間らしい思いやり、方策、現実的な援助としての愛情を、日本の婦人は実に貧寒にしか享けていないという意味なのであった。
[#地付き]〔一九四六年一月〕
底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
1981(昭和56)年3月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「東京新聞」
1946(昭和21)年1月13日号
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
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