け入れず、其を外へ流し出してしまうしかしかたがなかったでしょう。それは、大人も皆そうでした。しかし、今は、そういう家畜のような生きかたをしないでよい時になりました。自由の時代がはじまった、ということは、私たち一人一人が、自分の希望と共に其を実現してゆく責任をもって生きるようになったということにほかなりません。ひとのせいにして置けなくなった、ということです。自分で蒔いたよろこびの種は、その努力に酬いるよろこびの垂穂として、自分たちで刈りとることが出来るときになったということなのだと思います。
若い人々よ。大人が、あなたがたの生きかたを眺めたとき、かつては自分たちも、あのように濁りない瞳、あのように真直な心とをもっていたのだと感動をもって思いかえし、一刻なりとも素直な心をとり戻すように、其位健やかに、熱心に、よく生きようと励んで下さい。
若い少女たちが、その歌声の澄みわたった響で太陽の光線を美しく顫わすように、疲れ、鈍らせられていない良心の流露で、誇りたかく生きる道を進んで行ったら、其姿は、優しくひるむことない進歩の旗じるしとなると思います。
[#地から1字上げ]〔一九四五年十二月〕
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「少女の友」
1945(昭和20)年12月号
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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