は、マルクシズムとか、階級闘争とかいろいろの言葉を文中につかっているが、実際はそのABCさえも理解していない。「仮にこの武器によって(プロレタリア文学のこと)次第に階級闘争を激化させ」云々というところから一枚ばかりの間にある矛盾だらけの文章で、それは明かに示されている。筆者は、わる丁寧な言葉で、御教示を仰ぎたいとか何とか文学的修辞を並べているが、無用なことだ。
第一、プロレタリア文学の世界的陣営で、芸術創作上の弁証法的方法の問題が、どの位熱心に、誠意をもって討究されているか。作品中に具体化されているか。その見易い事実さえも筆者は無視しているではないか。残念ながらこの公開状は階級闘争における、芸術運動における、全く常識的な土台さえ無いところから書かれている。
而も、明瞭な反動性をもって一貫しているため、無視も出来ないという厄介なものだ。役に立つところがないばかりか、あるのは害だけだ。この公開状を見ると、われわれプロレタリア文化運動に従う者の面前に、どんな広汎な、多事な戦線が展開されているかを痛感する。[#地付き]〔一九三一年十月〕
底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
1979(昭和54)年7月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
1952(昭和27)年8月発行
初出:「時事新報」
1931(昭和6)年10月7日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年5月26日作成
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