二人の弟たちへのたより
宮本百合子
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火野葦平さんが先頃帰還されて、帰還兵の感想という文章を新聞にかいていました。そのなかで、最も私の心をうったことは、戦線にいる兵隊さんたちは、だれでもみんな故郷からのたよりを待っている。何でもない毎日のことを書いた、その何でもない手紙というものこそ待っているのだ、ということでした。これは全くそうだろうと思います。丁度その文章をよんだとき、従弟の一人でもう二年以上内蒙に出動しているのから手紙が来て、そっくりそのとおりのことを云ってよこしていました。あたり前の何でもない日々のことを書いたものが読みたいと沁々思う、と。
これは達ちゃんの実感にもきっとあることでしょうね。隆ちゃんにしてもそういう感じでしょうと思います。私は先ずこのたよりのなかで、出来るだけこまかく、その何でもない心が休めるような毎日のいろんなことをすこし話したいと思います。
先ず、二人とも丈夫のことを心からうれしく思って居ります。もう
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