の、禅ぽいいいまわしでかかれていた。伸子は、おかしがって、
「どうです?」
ときいた。
「あらたかでしょう? よその占いなんか、とても足もとへもよれないでしょう」
「いや、全くこれはいいところを当てたですよ!」
 木下の言葉の真剣さに伸子はびっくりした。占いなんかをしてみる人の心もちにたいして、最大公約数のような、こんな常識が何か真面目な作用もするというのだろうか。伸子は、思いもかけないという顔になった。そして、
「なにが当ったの?」
ときいた。
「なにがって――ちょっと云いにくいが、ともかくね。いや、ありがとう。大いに得るところがある」
 ほんとうに、そうであるらしかった。この鼠色背広のひとには、ちょいとしたなにかのきっかけが入用だったのにちがいない。伸子はそう判断した。
「わたしの運勢はこれですけれど……元日にやったんだから、たしかよ。素晴らしいでしょう」
 それは、43という番号だった。勲章をつけて、からのおはち[#「おはち」に傍点]をかきまわす図。そう題があって、その題のとおりの絵がかかれていた。髭をつけ、鳥の飾毛のついた礼帽をかぶった大礼服の男が、板の間に膝をついておはちをかきまわしている。そのおはちの、こちらに見えている内部はからっぽで、一粒の米もなかった。
「ハハハハハハ」
 木下はひどく愉快そうに、大笑いをした。
「これはいい。いいじゃないですか」
「そうよ。わたしも気に入っているんだけれど」
 伸子は、自然に飛躍した。
「こまることもあるわ。この絵を見せて、わたしはこういう運勢のものですから、よろしくって云ったって、外国旅行はさせてくれないから」
「――そんな話が出ているんですか」
 二人にソヴェト旅行の計画がきまったこと。素子は自分で支弁するが、伸子には旅費がなくて、からの旅券下附願を出してあることを話した。
「なんとかならないかな」
「わたしに、小説でない、いろんなものをかけるなら、もちろん、木下さんのところへ相談に行ったんです。無理にだっておたのみしただろうけれども、わたしは、それが駄目だから……言葉も通じないところへ行くんだし……」
 どこへ行っても小説以外のものはかけないだろうということを、伸子は、自分の生活上の無力さとして感じているのであった。しかも旅行している何年かの間は、その小説さえたいしてかけまい。そう予感してもいるのであった。

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