再び「戦争と革命の時期」である今日、抑圧から立ち直ってプロレタリアートの組織をつくることを書いたものである。
宮島新三郎というブルジョア文学の批評家は、この「地区の人々」を批評して、概念的に書かれたもので大していい作品でない、小林氏ほどの才能のある作家がこのような作品を書くようにし、白テロの犠牲とした作家同盟は考えるべきであるというようなことを書いている。
「地区の人々」は、たしかに終りに行けば行くほど説明的になり、小説としての丸彫にした描写は欠けている。同志小林の、完成された傑作ではない。そのことは明らかであるが、我々はこの「地区の人々」がその作品としての未完成において、これまでの同志小林のどの作品にもなかった、真の規模の大きさと、主題の中にはまり込んで書いている腰の据りとを感じ、ここに新しい発展の段階と次の傑作への道が示されていたのを認めずには居れないのである。[#地付き]〔一九三三年三月〕
底本:「宮本百合子全集 第十巻」新日本出版社
1980(昭和55)年12月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第八巻
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