場面に吸収しようとしている。この二三年来、日本の女の力はおびただしく生産の場面に進み出しているのだが、とくに来年の春からは、全日本の女学校、専門学校卒業生に対して、職業紹介所を通じての勤労への動員が行われることになった。一昨年あたりから、小学校を卒業した少年少女たちが、職業紹介所の統制のもとに驚くべき数で産業に従って来ている。来年の春からは女学校を出る人々が労働のための新しい力の源泉として調査され、職場を与えられて行くことになったわけである。
これまで、生活上の必要から就職した若い娘さんたちはどっさりあった。また、ただ家にのんべんだらりとしているのは苦痛で、少しでも自分の社会生活が欲しくて、職業についた人というのも少くはなくなって来ていた。これらの場合はどちらにしろ、職業につく自分としての動機は明瞭に自覚されていたと思う。特に、経済上の必要は直接なくても、一人の若い女として社会における自分の生活というものを経験したくて職業についた人たちは、その家庭に物質上のゆとりがあるだけ、ある場合には昔のものの考えかたの伝統に自分の希望というものを対立させて、その主張を経て、職業をもって来ているよ
前へ
次へ
全19ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング