にふれて語ることさえ、犯罪行為として罰した。ナチスのドイツが同じこと、あるいは、もっとひどいことをした。第二次大戦の結果は、言論を封鎖し、出版統制を狂的に行ったすべてのファシズム国家の権力は、窮極には倒れざるをえないことを証明した。なぜなら、どんな力でそれについて語り、書く自由を禁じたとしても、「事実」の力が現実に歴史の推移に作用しずにはいないからである。人間は社会的生物である。この基本的な事実から発言の抑圧は直接人間の生存の自由に加えられる抑圧となる。人間というものは感じること、判断したことについて黙っていられないものとして生れている。だからこそ、人類社会は発展して来た。“地球はまわる”この真実は今日子供たちでも知っている。だが十七世紀の法王庁はこの真理を語ったかどでガリレオ・ガリレーを重罪に問うた。ガリレーは以後そのことについては語らないと裁判で答えたが、彼はひそやかにつぶやいた、「しかしそれは動く」と。そしてそれはそのとおりなのだ。徒らに言論を抑圧するということが自然と社会のすべての事実に対して、どれほど目さきのききめしかなく、しかも大局からみて聰明な処置でないかということについ
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