一人、暗闇夜、自転車をとばして地区のデンタンを電車・乗合自動車のうしろに十数枚はりつけた。
○大衆闘争の中から大衆闘争の戦術を学べ。
○国鉄と麻布三連隊の兵士
 赤坂一レンタイと市電労働者の共同懇談会が持たれた。
○青年印刷工 六十九銭ぐらい。
 一人の仲間は、「活字中の漢字という漢字を知って居り」その人を先にたてて皆のあつまる会をつくり、会の金を出すためにその男はゴミ箱から緒の切れた板うらを出して来てはいた。会は雑誌とデッドボール[#「ボール」に「ママ」の注記]と、バリカンとカミソリを買い要求に応じて全工場にグループをつくり、大衆的に組織して行った。
 十二月の忙しい最中。毎晩十一時、十二時まで。夜勤料は四割引、十時間で六時間分である。それで体をこわすような労働強化はやらぬことときめている。文選十六人は彼を入れすぐ立ち、六時の夕飯三十分の休みに、文選十六人はベン当箱をもって一つところに集り、きめた以上の仕事はしないこと、きめた以上は監督のところへ突かえしにゆき残業させぬようにしようと決議して就業。「ガンばれ」「うら切るとゲンコだぞ」「皆でカントクを睨みつけろ」等文句を綴って活字の一列はカエシをしている皆の間に、順にまわされた。十一時に終業すると、文選場で一同勢ぞろいをして、カントクのところへ残りの仕事をひっつかんでデモで押しかけた。これでかって、十八人になり、二人の文選長も入った。(文選場は青少年のみ)
 次に夜業四割引反対の闘争のために、全員をまき込むことを考え、親睦会の自治化をはかる。幹事改選に壮年のSを当選させる。そして、大衆的懇談会で革新有志二十人をつくる。

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国鉄。
(一) 一般に官業だから政府のつぶれぬうちは従業員の生活は保証されていると考えている。十五ヵ年間以上つとめると一時金なら二千円以上
  年金なら一時千円で以下毎年金が下りるので、おとなしい専一。
  娯楽設備一年二回観劇。改造さえよめぬ。労救に関係出来ぬ。
横浜ドック
  従業員二千人。ギマン政策として日給三円以上は二十銭、二円以上十銭、二円以下六銭のね上げをしたが、日給を時間制にしたので、仕事がないと一文にもならぬ。
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底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年5月30日初版発行

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