をかかげさせて、左の掌に白い羽根の扇をのせてしとやかに動いて居る。
 あっちの根元に立派なホールがあって、集った人達が笛を吹いたり※[#濁点付き片仮名ア、418−18]イオリンを鳴らして居るかと思うと、すぐここの根元では、すばらしい天蓋のある乗物にのって美くしい女王がそそり立った城門から並木道へさしかかって居る。
 あー、あの可愛い女の人の靴がぬげた。
 私は誰か出て来て、なおしてあげる人はないのかと私の気が揉める。
 白い羽根を一本一寸気軽にビロードの帽子にさした若者が、愛嬌のいい顔をして小器用になおしてあげる。
 どっかハムレットに似て居る。
 オフィリアは居ないかしらん、



底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
   1986(昭和61)年3月20日初版発行
※1915(大正4)年3月28日執筆の習作です。
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2008年2月28日作成
青空文庫作成ファイル:
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