それぞれの特色をあきらかにしてゆく努力を払っていいのではあるまいかと感じられた。たとえば、『進歩』は『知識』などにくらべれば頁数も売価も違うのであるからそれに準じた内容の扱い方をもう一工夫あってよいのではあるまいか。『知識』が、各誌共通のトピックのほかに内容の多様性を求めて一頁論壇、谷崎潤一郎の文章読本の短い批評、宗教についての記事などを広汎にのせていることはプラスであり、続行されたい点である。けれども、たとえば「音楽雑談」や一頁人物評、吉川英治についての書きぶりなど、もう少し含蓄をもって読者の頭にきざみつけられるような筆致が更に効果的であったろうと考えられた。
 この雑誌のみならず、すべての雑誌が、もっともっと沢山わかり易い自然科学に関する記事、世界の人類が今日までたたみ上げて来た唯物論史、あるいは階級性と道徳との相互関係などをあきらかにする記事を根気づよく続けてのせる必要があると思う。『大法輪』という四百六十余頁の大宗教雑誌は新年特輯に「転向者仏教座談会」を催し、そこの婦人記者となった長谷川寿子は、自身の略歴を前書にして「遂に過去の一切の共産思想という運動を清算し」大谷尊由に対談し
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