間遅れながら、社会主義連邦中枢よりのニュースを、シベリアのところどころに撒布しつつ進行しているわけである。
 この『コンムーナ』は二十七日の分である。深い興味で隅から隅まで読んだ。丁度今この地方は、牛酪《バタ》収穫時に入っている。「十月一杯でバラビンスキー地方は一九〇ツェントネル(百ポンド)の牛酪《バタ》をバタ生産組合へ支給する予定だ。十月二十日までに一三五ツェントネルを集めた。九月の生産予定計画を我々は七五パーセントしかみたすことが出来なかった。ところが十月は二十日間に予定の七一パーセントをみたした。組合員諸君及集団農民諸君! このテンポをおとすな!」そしてバタ生産に関する農村通信員の面白い批判が掲載されている。
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バタ工場の支配人を代えろ!
バタ工場上ナザロフスキーの支配人ゴルデーエフは生産に従事することを欲していない。工場は無管理状態に君臨されている。
工場が燃料に欠乏を感じぬ日は一日もない。工場用の水はきたない。そのために製造したバタの品質が低下する。
上ナザロフ村にもう一つバタ工場がある。そこの建物はひどい有様だ。扉はこわれている。寒くて働けぬ。
この間支配人はクラスノヤルスク村へ牛乳買上決算に出かけた。そこで彼は三昼夜べろべろにのんだくれ、その結果として、バタ工場に属す馬をどっかへなくしてしまった。
グロデーエフは三頭馬をもっている。以前グロデーエフは何人か小作人をもっていた。現在十九歳の小作人ニコライ・クリコフを使っている。
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 手帖にうつしているとY、赤鉛筆をこねて切抜の整理しながら、
 ――何ゴソゴソしているのさ。
 ――知ってる? あなた。牛乳生産組合がどんな風に農民から牛乳を集めるか。
 СССРで集団農業に移ろうとした時、農民及政府双方で一番困難したのは家畜の問題だった。穀類集団農業から集団牧畜へ。これは常に積極的刺戟を加えられている点である。この新聞で見ると牛乳協定は非常に農民の利益を計って改正されている。去年の牛乳協定は農民の消費を考慮せずにされた。つまり各農戸の人員を数えず、バラビンスキー地方一帯、牛一匹一年六・六ツェントネル平均として協定標準が定っていた。各農家別にすると、
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一頭持   四・六(ツェント)
二頭持   六・〇(同   )
三頭持   七・五(同   
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