せられていました。そのために、事件がわけがわからないものであると一緒に、下山氏に対する、また遺族に対する世間の人間的な同情さえそらされている結果になってしまっている。下山事件は国鉄整理と労働者階級の弾圧のために実に政治的に利用されました。
 三鷹事件は、数名の共産党員を検挙して、その中に真犯人があるように宣伝されています。しかし、次の事実は事件の核心に関係しているにもかかわらず、商業新聞には発表されていません。それはこういう事実です。事件当夜、立川市の警察署長は立川国警から電話をうけて、八時半頃三鷹附近で事件がおきるから注意して警戒にあたれと、命令をうけたと二十七日『アカハタ』記者に語っています。電話をかけた立川国警署長は、「同様な意味の電話が国警本部から八時半頃あった」と語っている。その電話は八王子管理部から国警本部へ入ったものであるが、この電話の「入手径路は捜査されていない」(八月二日アカハタ)。この電話でみれば、何処よりも先に国警本部が事件の起きることを予知していたわけです。電車がぶつかってめちゃめちゃになった三鷹の交番に警官は一人もいなかったという事実は何を物語るでしょうか。捜
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