ズム流行児の出現にも注目されます。
過去十数年にわたってわたしたち日本の人民は、正しい社会科学の本もよめなかったし、侵略戦争の本質を解明した本もよめず、人民の文学としての民主主義文学の発展史もよまされませんでした。その思想的空白、ファシズムの暗いほらあな[#「ほらあな」に傍点]にうちこまれていた理性のゆがみと弱視のために、この四年間日本の民主主義は独特な障害に面してきています。猪木氏の出現は、今日の若い読者層が過去の社会科学の文献に通じていず、したがって同氏が論拠とされている、ローザ・ルクセンブルグやトロツキーなどの引用文の、革命理論の誤謬を実際的に批判する能力は持っていないというギャップをねらっています。同氏が利用しているようなローザ・ルクセンブルグやトロツキーの文献を読んでいないことは、一般読者はもちろんのこと、前衛的な学生でもこの四年間の忙しさで同じことでしょう。ローザの経済主義的な誤謬(ある国の革命の要因を資本主義経済発展の段階だけにおいて見たあやまり)、トロツキーの世界革命がおこらない間は、それぞれの国での革命、社会主義生産への移行は不可能であるとした理論などは、こんにちの
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