査のすすむにつれて三鷹の組合の副委員長をしている石井万治という人は嫌疑をかけられている書記長の自宅を訪問し、他所へつれて行って饗応し、ノートをひらいて、緊急秘密指令三百十一号、三百十八号というものをみせ、あなたのことについては骨を折るという話をしています。その指令三百十一号には、突発事故が起きたらできるだけ復旧事務を拒否せよ、民同との摩擦を回避せよ、などという文句があったそうです。北海道に偽の指令が流れたことがあった。この指令もおそらくどこかの家宅捜索をすれば、「そこにもあった[#「そこにもあった」に傍点]」ものとして発表されるでしょう。昔からこの手は使われていることです。
 ファシストの地下組織が千葉で発覚しています。千葉のファシスト地下組織は、もと上海特務機関中尉である大島軍司という人物を中心にして、千葉県知事、市長、成田山の僧正、千葉市警察署長、その他各地の警察署長とれんらくして、大島は警察パス、外務省パスを所持して、現在は法務庁に籍を持っているそうです。共産党員をスパイにつかって、共産党を非合法に追いこむためにさまざまな挑発をおこなってきたことが判明しました。(七月三十一日アカハタ)
 こんにちの商業新聞は、スクープさえ自由にできない状態におかれています。千葉のファシスト組織のことが一行でもかかれた新聞があったでしょうか。わたしたち人民の判断を、公平で、明朗で、正確なものにするためになくてはならない現実の材料を奪うために、政府はどんな手段をとってきているかが分ります。
 ファシズムに対するわたしたちの闘いには、これらのデマゴギーと挑発によって事実を不正確につたえられる現実の一つ一つに対して、先ず事実を検討し、それから落付いて判断してゆく理性のつよい歯車がいります。現実的な生活的な勉強がいります。

        二 「進歩的」ということ

 わたしたちは、みんな生きることを心からよろこんではりあいのある人生を生きたいと思っているのです。ところが、この資本主義の社会の社会悪と矛盾、苦悩惨酷があまりひどいから、わたしたちの心には社会的な自覚とともに、正義感や疑問が起って、次第に階級社会の過去の発展の歴史と未来の展望に対して無関心でいられなくなって来たのです。そこから出発して共産主義を検討し共産党員にもなってゆくのです。
 資本主義の社会がゆきづまっているという
前へ 次へ
全17ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング