それを唯封建的な忠義の行為と見ず、浪士たちの経済的事情やその他の現実的いきさつを主眼として扱ったものもあったようです。
これから森田氏がどういう作品をかかれるか知らないけれども、六十八歳でこのまやかしだらけの日本の民主化に対して自分の社会人としての良心的在り場所を示されたことはうなずけます。
一九三三年以後日本のファシズムと侵略戦争の推進に対して、不幸な日本人民とその芸術家であるべき作家はあまり無力でした。反ファシズム人民戦線運動がおこったときも、日本の文化人はその重要さを理解しないで、ファシズムと戦争反対との人民的階級の根拠をまっ殺しました。
森田さんはもう二度と日本にこの悲劇をもたらすまいと思っておいででしょう。その同じ決意において、私たち民主作家は森田さんの前進する一歩に対して拍手をおくります。
[#地から1字上げ]〔一九四八年五月〕
底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「アカハタ」
1948(昭和23)年5月9日
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
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