ものは、その自然現象に阻害を与えるような悪事情で女を働らかせている。その面に私たちの関心は向けられる。自然のことなのであるから、それが自然に処理され、自然に経験されてゆくような事情を、働く条件の中に求めてゆくわけである。苦しくなんぞないのが当り前だ、と云っても、あたり前でない状態で働くから、苦しくなるということが尠くない。例えば厠へ立つことが自由でない。何時間も立ったまま働かねばならない。これらは家に暮す女の知らぬ苦痛である。こういう問題は、当然現代社会の性質と婦人のおかれている諸関係に思いを到らせるのである。自働ベルトを一時間毎に二分止めて、その間に平常軽い体の屈伸運動をさせるだけでさえ、婦人の健康には大なるプラスであることを一般が知って欲しいと思う。[#地付き]〔一九三七年五月〕



底本:「宮本百合子全集 第十四巻」新日本出版社
   1979(昭和54)年7月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第5刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第九巻」河出書房
   1952(昭和27)年8月発行
初出:「婦人公論」
   1937(昭和12)年5月号
入力:柴田卓
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