」得る原始的社会は、訳者の云われている通り恐らく「パプア島の食人種」のところぐらいにしか残存していまい。正に近代の娘、妻、そして母たちは「実にその活溌な労働性の故に」夫婦愛より歴史性の古いと云われているその母性感情の故に、最も高度に錯綜した社会諸関係の辛苦にふれているという深刻な事実の裡にこそ、このバッハオーフェンの一巻が古典として存続し得る必然がかくされているというのは、意味深いことであると思う。
[#地付き]〔一九三九年三月〕



底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
   1981(昭和56)年3月20日初版発行
   1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
初出:「母性」ブリッフォート著・富野敬照訳、白揚社
   1939(昭和14)年3月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2003年9月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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